夏目漱石が先生をしていた頃、こんな質問を生徒にしたそうだ。
漱石:I love you これを訳せる人?
生徒:ハイ先生!簡単です。『私はあなたを愛しています』です。
漱石:違う。日本人は『愛してます』なんて言わない。
生徒:では、なんと言うのですか?
漱石:『月がきれいですね。』
・・・・こんなことを聞いて、先日みた小津安二郎の映画「お早よう」のラストシーンを思い出した。
なんとなく惹かれあってる風な、佐田啓二と久我美子が朝の駅でばったり出会い言葉を交わす。
啓二:お早よう
美子:お早よう
啓二:いい天気ですね。
美子:ええいいい天気ですね。
啓二:あっ、あれへんな雲だ。
美子:ほんとへんな雲ですわ。
啓二:いい天気ですね。
美子:いい天気ですね。
だいたいこんな感じの会話だった。
たわいのない言葉の繰り返しで妙な終わり方だなと思っていた私は、日本人としての感受性がとぼしいと漱石に嘆かれそうだ。
ラストシーンは、くり返す愛の交歓であった。
なるほど。 y.ishii